オーバーヘッドプレスの目的と強み
- 三角筋前部〜中部、上腕三頭筋、僧帽筋上部、前鋸筋、体幹を一度に鍛えられる“プレスの王道”です。
- 立位で行うと体幹・臀筋・下半身の安定性まで同時に鍛えられ、ベンチプレスや懸垂など他種目の伸びにも直結します。
- 正しい軌道と呼吸を守れば、肩の健康(肩甲骨の上方回旋・挙上)にプラスに働きます。
→ 基礎は「筋トレの基本はBIG3|“本当に効く王道3種目”の魅力とやり方」もどうぞ。
セットアップと1レップの流れ(立位バーベル・ストリクトプレス)
スタンス・握り・ラックからフィニッシュまでを“同じ手順”で毎回固定するのが最短ルートです。
- スタンス
- 足幅は腰幅〜肩幅。つま先はやや外。お尻と腹を軽く締め、肋骨は下げて(反り腰を防ぐ)。
- グリップ
- 肩幅より指1〜2本広いが目安。前腕が真上に立つ幅を優先。
- 手首は立てる(過伸展しない)。バーは掌の母指球寄りへ乗せ、前腕と一直線。
- 肘位置とバー位置(スタート)
- 肘はやや前(真下より“少し前方”)。
- バーは鎖骨あたり〜上胸に軽く触れる位置。首で支えない。
- アンラック→セット
- ラック高さは鎖骨下。肘を伸ばして持ち上げ、一歩下がって静止。臀筋を締め・腹圧ON。
- プレス(上げ)
- 顎を軽く引いて顔をのける→バーが額を越えたら頭を前に差し込む(ヘッドスルー)。
- バーは顔のカーブを避けた後、一直線で頭上へ。中足部の真上に通す。
- ロックアウト(トップ)
- 上腕と耳が近い位置。肩甲骨は上方回旋+軽い挙上(“肩をすくめる”方向に少し)。肘は伸ばし切る。
- お尻・腹は締めたまま、肋骨は開かない。
- 下ろし(ネガティブ)
- 頭をやや後ろへ引き、バーを垂直に下ろして上胸へ。2〜3秒でコントロール。反動は使わない。
共通フォーム
- お尻締める・腹圧・肋骨下げる(腰反り防止)
- 顎を引いて“顔よけ→頭を通す”
- バーは中足部の真上(横から見ると直線軌道)
テンポ・呼吸・腹圧
- テンポ:下ろし2〜3秒/下で0.5〜1秒静止/上げは1秒で力強く。
- 呼吸:下で吸う→腹圧ブレーシング→押し切る→トップ〜下降で吐く。重い日は1レップごとに腹圧を作り直します。
- 腹圧の合図:ベルトの360°にお腹を当てるイメージ(ベルト有無を問わず)。
よくあるミスと“直すドリル”
ミス | ありがち原因 | 直し方・ドリル |
---|---|---|
腰が反る(肋骨が開く) | お尻・腹圧が抜ける/胸で押す意識 | グルートクランチ→プレス(尻締め練)/ウォールプレス(壁に踵・尻・背中) |
バーが前に流れる | 顔よけ不足/肘が後ろ | 顔よけ→ヘッドスルーの誇張練/ピンOHP(額〜鼻高さ) |
手首が痛い | 掌の中央〜指側で持つ/反り過多 | 母指球に乗せる/リストラップで角度固定 |
肘が外へ割れすぎ | グリップ広すぎ/前腕が傾く | 前腕垂直幅へ調整、ナックル上を保つ |
顔で受ける(首に当たる) | バー軌道がS字/胸が落ちる | 胸高く・肘わずか前、下ろし2〜3秒で直線軌道練 |
弱点別プラスα
- スタート〜額まで重い:ピンOHP(胸上〜額)、デッドストップOHP
- 額〜頭上で止まる:プッシュプレス(オーバーロード)、ハイインクラインプレス、トライセプス(ライイングE/Z・ロープ)
肩を守るテクニック(安全第一のチューニング)
- “肩甲骨はベンチのように固定”はOHPではNG。 上方回旋・挙上が自然に起きてOKです。
- 違和感があるときは
- ダンベルOHP(ニュートラルグリップ)に変更
- 角度をつけたハイインクライン(75〜85°)へ一時退避
- レンジ短縮のピンOHP(額〜頭上の区間のみ)
- ウォームアップはフェイスプル/外旋/前鋸筋アクティベーション(スキャプラプッシュアップ)を各10〜15回。
バリエーションと使い分け
- ダンベルOHP(立位/座位):可動域・左右差修正。ニュートラルで肩に優しい。
- プッシュプレス:下半身の反動で通過点を越え、神経系・トップ強化。
- Zプレス(床座位):体幹要求MAX。反り癖の矯正に最適。
- スミスOHP:軌道が安定。テンポ管理・ボリューム稼ぎに向く。
- 片手ダンベルOHP:体幹の抗回旋刺激。左右差矯正向き。
セット×レップと進め方(目的別)
- 筋肥大メイン:6〜10回 × 3〜5セット(RIR1〜3、休憩90〜150秒)
- 筋力寄り:3〜5回 × 3〜5セット(RIR1〜2、休憩150〜240秒)
- 可動域・フォーム習得:8〜12回 × 2〜4セット(テンポ3-1-1)
プログレッション
- ダブル・プログレッション:同重量で目標回数上限×全セット達成→+2.5kg(マイクロプレート推奨)。
- 週2頻度なら
- Day1:ストリクト(中〜重)
- Day2:ダンベル or スミス(中〜軽・テンポ管理)
- 押し系の週あたり合計作業セット(胸+肩プレス)は12〜20セットを上限目安に。
ウォームアップ例(本番 50kg×5 を想定)
- シャフト20kg×10
- 30kg×5
- 40kg×3
- 45kg×2
- → 50kg×5(本番)×3〜5セット
各セット前に尻締め・腹圧・顔よけ→頭通しの3点ルーティンを声出し確認。
肩幅を作る“相性抜群の補助種目”
- サイドレイズ(ミッドレンジ〜トップ):中部強化(12〜20回×3〜5)
- リアデルト種目(フェイスプル/リバースペックデック):肩の安定化
- 上腕三頭筋(ローププレスダウン、オーバーヘッドエクステンション):ロックアウト底上げ
- 前鋸筋(スキャプラプッシュアップ):頭上での肩甲骨コントロール
1分チェックリスト(保存版)
- お尻締めて腹圧OK?肋骨は下がってる?
- 前腕は垂直?手首は立ってる?
- 顎を引いて“顔よけ→頭を通す”ができた?
- バーは中足部の真上を通っている?
- トップで上腕が耳の横/軽いシュラッグ(挙上)が入っている?
よくあるQ&A
- Q. 立位と座位はどっちが良い?
A. 立位は体幹まで強くなります。腰に不安がある時や“反り癖”が強い時は座位やZプレスで矯正しましょう。 - Q. 肩が痛いときの最優先は?
A. 可動域を痛みの出ない範囲へ短縮+ダンベルのニュートラルグリップ。外旋・前鋸筋の活性を追加して再評価が基本です。 - Q. ベンチと両立は?
A. 押し系ボリュームの合計を週12〜20セット内に。OHP重い日はベンチ中、ベンチ重い日はOHP中〜軽にすると回復しやすいです。
コメント