5月12日、獣人心理研究所は「都市部のトリ獣人の一部が、飛べるにも関わらず飛ばなくなっている」と発表した。筋力の衰えやケガではない。単純に、飛び方を忘れているらしい。研究員が語るには「羽は完璧に機能しており、体力も十分。でも、ジャンプしてからどうすればいいかを思い出せないという深刻な事例が確認された」とのこと。
実際、調査中に確認されたトリ獣人の行動には、「飛ぶぞ」の気合いでジャンプしたあとに「……あれ?なんか次なにするんだっけ」と立ち尽くす様子や、空中で“羽ばたき忘れた”と気づいて爆笑しながら着地する様子も見られたという。なかには着地後、「いまのは“思い出し体操”だから」と言い訳するトリ獣人もおり、事態は深刻なのかユルいのか、判定が難しい。
都市生活の利便性に慣れすぎた結果、脳が“飛行”を削除対象フォルダに入れてしまった可能性がある。あるハヤブサ獣人は、「俺、昔は電線スレスレを飛んでたけど、今はエレベーターが速すぎて…空って非効率じゃない?」と発言。これには鳥類研究者も思わず「技術が進化しすぎるのも問題」と口をこぼした。
SNSでは「私も最近メガネを頭に乗せたままメガネ探してるし同類」「飛び方は“再ダウンロード”できるのか?」など親近感あふれるコメントが殺到。中には「飛び方忘れたついでに、ATMの暗証番号も忘れた」と人間界の混乱報告まで混ざっている。
なお一部の施設では、羽ばたきの基礎から思い出すための「空のリハビリ講座」が開講されており、講師には“着地だけで金メダルを取った伝説のペンギン獣人”が招かれている。
飛べるのに飛ばない。飛びたいのに飛び方を忘れた。
でも、忘れたってことは、また覚えられるってことでもある。
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