草に生き、草に争う 高級牧草をめぐるカピバラ獣人たちの静かなる戦い

6月7日、南湿原地区で発生した「高級草争奪戦」が、じわじわと獣人界で話題となっている。
事件の舞台となったのは、地元農園が試験的に育てていた特別品種「極柔エメラルド草」。
その香り高さと食感の繊細さは、“噛んだ瞬間に頬がとろける”と称され、特に草食系獣人の間で人気沸騰中だった。

事態が動いたのは、販売初日。
予約していたはずのカピバラ獣人たち数十匹が、農園前に列をなして静かに抗議。
「順番は水の流れに任せるべき」「我々は争いたくない、だが譲れない」など、草をめぐる緩慢な緊張状態が生まれた。

その中でひときわ目立ったのが、若きカピバラ獣人のユル・バラン氏(16)。
争いを避けるために“自作の草”を持参したが、隣の列の個体に「それはただの雑草」と指摘され、崩れ落ちた。

この騒動に対し、農園側は「来年はもっと植えますので落ち着いてください」とコメント。
また、同じく草を主食とするアルパカ獣人からは「我々も参戦する準備はある」と不穏な声明が出されている。

SNSでは「草で戦争起きるなんて平和すぎる」「譲り合い精神とは…?」「今日の夕飯、草になりました」などの声が続出。
一方で、牧草にブランドが生まれるという“食文化の多様化”の観点から評価する声も少なくない。

平和な顔で黙々と草を食む彼らの裏で、草はただ風に揺れている。
果たしてこの“静かな草戦争”はどこへ向かうのか──。

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