5月8日、獣人界学術評議会は「現存する最も思考力に優れた個体」として、タコ獣人のチョウ・ノウ氏に大賢者の称号を授与した。
タコ獣人はもともと脳が3つあることで知られている。各腕を独立して制御し、空間把握、感情処理、意思決定を同時に行うため、知的水準の高い種族として知られてきた。しかし今回登場したチョウ・ノウ氏は、そのすべてを超える“7脳構造”。しかもそのすべてが常時稼働しているというのだから、ほとんど知性の過労である。
調査にあたった神経研究班によると「彼の思考は完全なマルチスレッド処理。質問に対して返ってくるのは、回答と反論と代替案と、あとだいたいレシピ」。一度に話す内容が多すぎて、通訳が三名必要だったという。
チョウ・ノウ氏はすでに哲学、外交、生物学、心理、宇宙論、戦術理論、そして鍋料理に精通しており、日中は学会、夜は鍋奉行として各地を飛び回っている。人気の「3秒で悩みを解決する海底カウンセリング」では、まだ相談を口にしていない段階で「うん、それはやめた方がいいね」と答えられてしまうため、一部では「もはや予知」との声も。
本人は「考えるのが趣味みたいなもの。でも、夜中に6つの脳が同時に思いつきを喋りだすから寝られない」と語る。7脳構造の唯一の弱点は“沈黙の時間がない”ことらしい。
SNSでは「脳の過積載」「うちの会議はチョウ・ノウ1体でいい」「人間界にいたらとっくにノーベルもミシュランも取ってる」と絶賛の嵐。すでに外交部門では、彼を人間界との交渉担当に起用する動きも出ているという。
彼の存在は、知性という言葉の意味そのものを再定義しようとしている。思考が生き物だったなら、それはきっと今、タコの姿をしている。
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