6月8日、南湿原区の診療所にてカタツムリ獣人4名が同時に体調不良で搬送されるという事態が発生。
原因は、彼らが好んで食べていた「紫陽花の葉」だった。
紫陽花は、獣人界でも初夏の風物詩として人気の植物。
湿気の多い時期をしっとりと彩るその姿は、特に“しっとり系”の種族、カタツムリ獣人たちにとっては心のよりどころでもある。
今回中毒となったカタツムリ獣人の一人、ヌメリ・ダマシ氏(52)はこう語る。
「雨に濡れた紫陽花の葉があまりにも艶やかで…つい、一口、二口、三口……あ、これ美味しいやつだって」
だがその後すぐに体調に異変を感じ、のたうち回るようにして病院へ。
紫陽花の葉には「青酸配糖体」が含まれており、特にカタツムリ種族の代謝機能では分解が難しいとされている。
すでに獣人衛生局は「紫陽花の葉は観賞用とし、決して食べないこと」と注意喚起を発出した。
とはいえ、SNSでは「もはや毒もごちそうに感じる季節」など、半ば“初夏あるある”のようにネタ化されており、危機感の低さも問題視されている。
診療所の医師であるカエル獣人のピョコ田氏は警鐘を鳴らす。
「湿っぽいものは何でも食べていいわけではない。梅雨を生き抜くには、冷静さと、葉っぱを見極める目が必要なんです」
今後、紫陽花の近くには「食べるな危険」の立て札が設置される見込み。
だが、濡れた葉を見つめるカタツムリ獣人たちの目は、どこか名残惜しそうである。
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