5月21日、獣人気象庁は「例年を大きく上回る気温上昇が続いており、獣人界の広範囲で水不足が深刻化している」と発表した。特に梅雨入り前のこのタイミングでの連日の猛暑により、各地で池や水路の水位が下がり、影響は生活用水だけでなく生理的に水を必要とする種族にまで及んでいる。
その中でも最も影響を受けているのが、カエル獣人たちだ。
湿度と水分を皮膚から吸収し、生存と体温調整のバランスを保つ彼らにとって、この暑さはまさに“干からびの危機”。ある地方の公園では、ベンチの上でうつ伏せになったままピクリとも動かないカエル獣人が複数発見され、駆けつけた消防水隊によって全身にミストをかけられて回復した事例も報告されている。
「あと5分遅れてたら、カエルじゃなくて“せんべい”になってたと思う」
と語る救助隊員の声は、決して誇張ではない。
水がないなら風呂に入れば…と思いきや、問題はそこにもある。
カエル獣人たちの多くは「貯水タイプのお湯は肌になじまない」「シャワーじゃダメ。水たまりじゃないと」といった“水たまり依存体質”のため、代替手段が効きづらいのだ。
自治体では応急措置として、簡易湿地エリアや“ぬめり保湿スプレー”の無料配布を開始。SNSでは「給水塔の影に20匹ほど集まって瞑想していた」「今日の交番、濡れたカエルでいっぱいだった」など、報告と同情が相次いでいる。
一方で、本人たちは「そこまで言うほどじゃない」と涼しい顔をしながら、日陰でじっと目を閉じている。しかしその背中は、わずかにパリッと音を立てていたという。
梅雨はまだ来ない。
その前に、カエルたちの笑顔がカラカラになってしまわないように——
獣人界は今、“湿り気の価値”を見直す時期に来ている。
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