EMGって何?(超ざっくり要点)
EMG(Electromyography/筋電図)は、筋肉が働くときに生じる微弱な電気活動を拾って、どの筋肉がどれくらい動員されているかを数値化する方法。表面電極(皮膚にペタッと貼るタイプ)がトレーニング領域では主流で、各種エクササイズ間の相対比較に向いている。EMGは「効いてる=高い」傾向はあるが、筋肥大=EMGの高さではない点は要注意(張力・ボリューム・ストレッチ負荷・回復なども関与)。それでも種目選びやフォーム調整の判断材料としては超有用。日本理学療法士協会Oxford Academic
胸(大胸筋)Top3と根拠
順位 | 種目 | ポイント |
---|---|---|
1 | バーベルベンチプレス(中グリップ) | 高重量×全可動域で大胸筋全体が高活性。傾斜やグリップ幅で分担が変わる。LippincottPMC |
2 | ダンベルベンチプレス | 可動域が広く、ストレッチ~収縮の両端で高い活動が出やすい。PMC |
3 | ケーブルクロス(ハイ→ロー) | 収縮位で張力が抜けにくく、下部狙いに好相性。PMC |
解説
ベンチは角度(0~60°)と手幅で筋頭の貢献が変わる。例:中~やや広めは胸の活動が上がりやすい報告。インクラインで鎖骨部が、フラットで胸中央~下部がよく働く傾向。ダンベルはROMと収縮維持、ケーブルは負荷の持続が武器。PMCLippincott
背中(広背筋・僧帽筋中部)Top3と根拠
順位 | 種目 | ポイント |
---|---|---|
1 | ラットプルダウン(前方・プロネイテッド、やや広め) | 広背筋の活動を高めやすい“定番”の手幅・前引き。後頭引きより推奨。PubMed+1 |
2 | チンニング(肩幅~やや広) | 自重でも高い広背筋動員。グリップで二頭・僧帽の寄与が変わる。PMC |
3 | バーベルベントオーバーロウ | 僧帽中部~広背中部の“厚み”作りに強い。PMC |
解説
プルダウンは前方×プロネイテッド(順手)が広背に有利という古典的所見が複数。幅は広すぎず“やや広め”~中程度が安定。チンニングは体重負荷+肩甲帯の動員で高活動。ロウは肩甲骨の内転を伴うため中背部がよく働く。PubMed+1PMC
肩(三角筋)Top3と根拠
順位 | 種目 | ポイント |
---|---|---|
1 | ショルダープレス(バーベル/ダンベル) | 前部・中部の活動が高く、全体発達の土台。PMC |
2 | サイドレイズ(ニュートラル~軽い内旋) | 中部狙いでEMGが上がりやすい。肘軽く曲げてコントロール重視。PMC |
3 | フロントレイズ or アーノルドプレス | 前部狙いの選択肢。可動域とコントロールを優先。PMC |
解説
最新の比較では、ショルダープレスとサイドレイズが三角筋前・中部で有意に高い活動。サイドレイズは上腕骨の回旋位で中部のEMGが変わる。前部狙いはフロント系が確実。PMC+1
上腕二頭筋 Top3と根拠
順位 | 種目 | ポイント |
---|---|---|
1 | インクラインダンベルカール | 長頭がストレッチされた状態から動くため高活動。PMC |
2 | プリーチャーカール/ケーブルカール | 収縮域の張力維持に優れ、一定負荷で効かせやすい。PMC |
3 | バーベルカール | 全可動域で安定。負荷増が容易。PMC |
解説
肩関節の角度で二頭長頭の起始長が変わり、EMGも変化。インクラインはストレッチ有利、プリーチャーは収縮保持に有利、ケーブルはトルクの安定が強み。PMC+1
上腕三頭筋 Top3と根拠
順位 | 種目 | ポイント |
---|---|---|
1 | オーバーヘッドエクステンション(ダンベル/ケーブル) | 長頭が伸長されやすく、全頭の活動も高めやすい示唆。Stronger by Science |
2 | ケーブルプレスダウン(ロープ) | 外側頭・内側頭の動員が高い。速度や把持で活動差。PMC |
3 | ナローベンチプレス or ディップス | 高負荷で三頭に強刺激(胸・肩の寄与も大)。PMC |
解説
三頭長頭は肩関節を跨ぐ二関節筋。肩挙上(頭上)で伸長→長頭の活動や刺激が増えやすい。プレスダウンはモノアートの肘伸展に集中でき、速度条件でもEMGが上がる。Stronger by SciencePMC
脚(大腿四頭筋・臀筋・ハム)Top3と根拠
順位 | 種目 | ポイント |
---|---|---|
1 | バックスクワット(深め) | 深さで大腿四頭筋・臀筋の活動が増す報告。パウロ・ジェンチル |
2 | フロントスクワット | 体幹角度の関係で四頭筋前面の寄与が増える。Semantic Scholar |
3 | ルーマニアンデッドリフト | ヒップヒンジでハム優位。臀筋群も高活動。Semantic Scholar |
解説
スクワットは深度・スタンスで大腿/臀筋の比率が変わる。深いほど股関節トルクが増え、臀筋のEMGも上がりがち。RDLは股関節伸展主導のためハム・臀筋が主役。パウロ・ジェンチルSemantic Scholar
体幹(腹直筋・腹斜筋)Top3と根拠
順位 | 種目 | ポイント |
---|---|---|
1 | アブローラー/ロールアウト(パワーホイール等) | 多くの研究でクランチ超えの高活動。Oxford AcademicPubMed |
2 | スイスボール系(ロールアウト/パイク) | 体幹前面を広く高活動にしつつ腰部は低負担の報告。日本理学療法士協会 |
3 | クランチ(正しいフォーム) | ベースとして有効。器具次第で同等~上回る場合も。PubMed+1 |
解説
ロールアウト系は長レバー+前方シフトで腹直・腹斜の抗伸展を強く要求。ボールやサスペンションは不安定性で共収縮が増え、EMGが底上げされやすい。日本理学療法士協会
EMGを“使いこなす”3つのコツ
- 目的に合わせて選ぶ:高EMG=効率的な動員だが、筋肥大なら張力・ボリューム・ストレッチ負荷も設計する。日本理学療法士協会
- フォームでEMGは化ける:グリップ幅・回旋位・角度で筋頭の寄与が激変(胸・背中・肩は特に)。PMC+1PubMed
- 比較は条件を揃える:負荷%1RM、テンポ、ROMが違うとEMG比較の意味が薄れる。論文も前提条件を読んで解釈しよう。サイエンスダイレクト
参考文献(主要)
- Barnett et al., 1995:ベンチの傾斜・手幅で胸のEMGが変化。Lippincottパウロ・ジェンチル
- Rodríguez-Ridao et al., 2020:ベンチ角度と各筋頭のEMG。PMC
- Solstad et al., 2020:バーベルベンチvsダンベルフライのEMG比較。PMCPubMed
- Signorile et al., 2002:ラットプルの手幅・握りと肩筋群EMG。PubMedLippincott
- Andersen et al., 2014:プルダウンの手幅比較(6RMとEMG)。PubMed
- Coratella et al., 2020:サイドレイズの回旋位で三角筋EMGが変化。PMC
- Oliveira et al., 2009:二頭の肩位によるカールEMGの差。PMC
- McAllister et al., 2014:各ハム種目のEMG。Lippincott
- Caterisano et al., 2002:スクワット深さと筋活動。パウロ・ジェンチル
- Escamilla et al., 2010:ボール系体幹エクササイズのEMG。日本理学療法士協会
- Escamilla et al., 2006/Sternlicht, 2005:腹筋デバイス比較。PubMed+1
- Nuckolsまとめ(2023):三頭長頭はオーバーヘッドで伸長利益(研究解説)。Stronger by Science
コメント