6月10日、中央種族庁が発表した調査によると、今年上半期だけで偽装登録・身元不明獣人の報告が昨年比320%増。
その大半が、タヌキ獣人による“過剰変身”だった。
本来、タヌキ獣人の変身能力は「軽い化け術」にとどまるはずだった。
しかし近年はテクノロジーやサプリの進化により、
“友人・家族・行政までも騙すレベル”のフルチェンジが可能となっている。
一例として報告されたのが、普段は温厚な教育者であるタヌキ獣人フクラギ・ムジナ氏(48)。
週末には「筋骨隆々のイヌ獣人」に化け、地下闘技場で「咆哮スパー大会」の常連として活躍していたことが発覚。
「本当の自分を見せるのが怖かった」と語るフクラギ氏だが、
近隣住民からは「ズルくね?」との声もあり、倫理的な議論が急浮上している。
獣人心理学会はこの現象を“アイデンティティ迷走症候群”と命名。
「化けることに慣れすぎて、誰だったか忘れてしまうケースが多い」と警鐘を鳴らしている。
一方で、SNSでは「今日はカッコいいトラ獣人に化けて通勤中」「タヌキ無双、憧れる」など、
化け能力を活かした“日替わり生活”に肯定的な意見も少なくない。
政府は現在、「1日1化けまで」の法案提出を検討中。
だが、すでに反対派のタヌキ獣人らが「自己表現の自由を奪うな」と訴えを起こしており、この問題はますます尾を引きそうだ。
“自分らしく生きる”とは何か。
本当の顔を忘れたまま社会に溶け込むタヌキ獣人たちの未来に、静かな問いが投げかけられている。
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